スヌーズレン

スヌーズレン  Snoezelen

  • 現在、日々、スヌーズレン実践を深めるとともに、日本スヌーズレン協会理事として、スヌーズレンセミナー開催などを通して、スヌーズレンの理念の啓発を行っています。
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■スヌーズレンとは何か

 スヌーズレンとは、重度知的障害者を魅了する感覚刺激空間を用いて彼らにとって最適な余暇やリラクゼーション活動を提供する実践であり、またそのプロセスを通して構築されてきた理念でもある。この実践は、1970年代、オランダにて始まったが、現在ではヨーロッパを中心に全世界へ広がってきており、日本においても重症心身障害児・者施設や知的障害児・者施設を中心に試みられつつある。スヌーズレンで使用される機器・設備は、その新奇性や不思議さによって注目されることが多いが、一方でスヌーズレンの背景にある理念は、日本において十分浸透しているとは言い難い。
 スヌーズレンという用語は、オランダ語で「クンクン匂いを嗅ぐ」、「うとうとする」という用語を組み合わせた造語で、外界を探索することや心地よくまどろむ状態を示すものである。スヌーズレンの実践とは、障害を持つ人々(スヌーズレン利用者)にとって受け取りやすい感覚刺激に満たされた物理的環境、そして利用者と支援者が楽しみや安らぎを共有できる雰囲気のなかで、利用者が自分にとって意味のある活動に携わることである。  スヌーズレンは、従来の療法、指導法、教育法などとは一線を画するものである。すなわち療法、教育法とは、利用者の機能改善や発達促進など治療教育的効果を期待して行われる実践であるが、スヌーズレンでは、そのような効果の期待しない楽しみや安らぎの体験であると考えられている。私たちが何気なくテレビ見て楽しむことや、お酒を楽しむ、好みの音楽を聴く、煙草で一服することと同じ類の、一息入れる時間、楽しみに没頭する自分自身のための余暇的活動であると考えるとイメージしやすい。

■利用者と支援者の関係性を見直すことから始まる。

 障害児者の福祉・医療・教育に携わる支援者とその対象者は、実質的には指導する立場と指導される立場となることが多い。支援者は、支援目標を達成するために対象者と関わるが、これが時に目に見えない圧力となり、対象者に重くのしかかる。スヌーズレンでは、「指導者―被指導者」という立場を限りなく取り除くことから始める。つまり「非指導的な関係」の構築である。  「非指導的」な関わりや、利用者の反応をありのままに受け止める関係のなかで、支援者も「なにかしなくてはいけない」というプレッシャー解放され、同時に利用者もあらゆる期待から解放され、自分のペースで環境と関わることができる。このような関係性の築くことで、両者に心地よさ、安らぎ、楽しみの共有が生じ、相互理解が促されるとされている。このプロセスが、スヌーズレン実践において最も重要なことであると考えている。

■利用者にとって快適な環境とは

 一般的にスヌーズレンの物理的環境は、利用者が好み魅了される視覚、聴覚、触覚、嗅覚、前庭覚(身体の動きに関する感覚)、固有受容覚(筋肉からの感覚情報)等の感覚刺激よって満たされ、独特の雰囲気を醸し出している。なぜこのような環境が必要なのであろうか。英国のスヌーズレン実践者であるJoe Kewinは、このような環境が私たちにとってのテレビと同じようなものであると説明している。重度知的障害を持つ利用者にとって、テレビは必ずしも彼らが受け取りやすい情報(刺激)を提供しているものではない。スヌーズレン環境は、試行錯誤の実践のなかで見いだされてきた利用者にとって受けとめやすく楽しめるテレビの代わりとなる娯楽機器なのである。ゆえにスヌーズレンで使用されている機器の特徴は、知的な楽しみ方というよりも感覚刺激そのものを楽しむ方法を提供する点にある。このような感覚的な楽しみ方は、一見奇異な印象を受けるものであるが、近年、このような感覚刺激に没頭するような活動は、自閉症者にとって非常に意味があるということが明らかになってきている。  またスヌーズレン環境を癒しやリラクゼーションのためだけのものである考えている支援者が多いようであるが、支援者にとってそのように見える活動も、利用者にとっては挑戦的な探索活動になっていることがある。もちろんスヌーズレンには、リラクゼーションの役割もあり、日常生活で降り注がれる無統制な刺激で混乱し疲れた心と体を癒すための、適切な感覚刺激と受容的な人間関係を備えてもいる。

■実践のプロセス 個々に異なる好みを受け入れ共感的に支援する

 スヌーズレンに取り組む場合、まず利用者のニーズや日常的な楽しみ方についての情報収集が必要である。これらの情報をもとに、楽しみ方を活動的もしくは安らぐように行うのかを検討したり、好みの遊びに含まれている感覚刺激の質や量の分析、環境と関わるための身体的機能の問題などについて分析を行い、利用者に最適な環境を整えておくことが必要である。さらに支援者が提供できる活動や環境についても同様にその特性を分析し、利用者のニーズや好みに適合するかを検討、必要に応じて活動や環境を修正する。
 私たちに好きなテレビ番組の傾向があるのと同じように、利用者にも色々な好みの傾向がある。もちろんスヌーズレンの実践は、このような好みを分析的に探り出すことが目的ではないが、私たちの日常生活のなかでも、ある人と仲良くしたいと思えば、相手の好きなことを知りたいと思うであろうし、それを一緒に楽しみたいと思うものである。例えば、好きな女性(男性)とテレビを見るときには、自然と相手が好みそうな番組にチャンネルを合わせる。スヌーズレンの実践においても、利用者の好みの番組を知っていることは、スヌーズレンが大切にしている“楽しみの共有”に一歩近づくことにつながる。利用者の好みを分析すること(評価)、それはスヌーズレンの目的ではなく、スヌーズレンを楽しむための一つの手段である。

■スヌーズレンに関する私の主な文献
●太田篤志:福祉タームの深層理解 スヌーズレン. 月刊福祉, 8:84-87, 2004.
太田篤志, 松本真代, 住久貴美子他:広島における現状第1編 理念と現場での課題.広島小児保健,14:36-38,2001.
松本真代, 太田篤志:新しい障害児・者ケアの理念「スヌーズレン」 広島における現状第2編 1症例を通して.広島小児保健,14:39-41,2001.
●太田篤志, 松本真代, 住久貴美子他:作業療法の枠組みで捉えたスヌーズレン実践. 作業療法, 20(特1):226, 2001.

■JSI-S
 JSI-Sは、スヌーズレン利用者の感覚機能の状態、つまり利用者の受け取りやすい感覚と受け取り難い感覚を明らかにするためのツールです。このツールは、より快適な感覚的環境のなかで、利用者と支援者が時間を過ごすことを目指しています。このためのJSI-Sでは、3つのステップでこのための情報整理を行います。 
http://atsushi.info/jsi/

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