JSI-R(Japanese
Sensory Inventory Revised):内部構造の統計学的分析
はじめに:
JSI-R(Japanese
Sensory Inventory Revised)は、感覚統合障害症候群の一つである感覚調整障害の評価法として、演者らが開発した質問紙である。 JSI-Rは、感覚調整障害に関連すると思われる行動質問項目、147項目(前庭感覚30、触覚44、固有受容覚11、聴覚15、視覚20、嗅覚5、味覚6、その他16項目)にて構成され、各々の行動の出現頻度をチェックすることで、感覚調整障害の有無を評価しようとするものである。現在、演者らは、JSI-R標準化に向けた研究を進めてきており、既に得られている標準サンプルデータをもとに質問紙の特性について多面的な検討を行っている。今回、標準サンプル分析の一環として、内部構造の統計学的分析を行ったのでここに報告する。
方法:
本研究にて使用したデータは、JSI-R標準化の過程で全国より収集された健常児データである。サンプル数は、合計320名であり、年齢構成は、4歳児115名、5歳児115名、6歳児90名、男女比は、男児162名、女児158名である。
JSI-Rの実施は、JSI-Rを対象児自宅へ郵送し、対象児童の養育者がJSI-Rへ記入するという方法にて行われ、主に母親によって回答された。なお対象児養育者に対するインフォームドコンセントは、文章にて行った。回答の方法は、5段階尺度によって行動の出現頻度が回答され、その点数化にあたっては、「まったくない」を1、「ごくたまにある」を2、「時々ある」を3、「頻繁にある」を4、「いつもある」を5とする順位尺度でスコア化した。以上の手続きで得られた標準サンプルデータを用い、今回は、JSI-Rに内包される因子を抽出する目的で、最適尺度法を用いた主成分分析であるカテゴリ主成分分析:CATPCA(SPSS
Categories 10.0J)の手法を用いて統計学的解析を行った。
結果:(成分の解釈と命名)
CATPCAにて算出された固有値をもとにカーブ法の手法にて、成分数を4に決定した。以下、各々の成分に大きな成分負荷をもつ項目と、その項目より推測された成分名及び解釈を示す。
1)第1成分. 視覚刺激に対する易反応性:主要な項目は、「光りの点滅や、イルミネーション、輝く物等をじっと見つめたりする」、「スーパーなど、いろいろな物があるところでは、それらが気になって、落ち着きがなくなる」、「過度に動きが激しく、活発すぎることがある」等である。これらの項目内容より、この成分は、視覚刺激によって注意が転導しやすい傾向や視覚刺激に引きつけられる傾向を示すものであると考えられる。
2)第2成分. 希に見られる行動群:主要な項目は、「動いているものを目で追うことが難しい」、「風船や動物などを、そっと握ることができず、握り方の加減がわからない」、「高い所の物を取るとき、頭よりも高い位置に手を伸ばすことを避ける」、「目の上を指や玩具で押さえたりする」等である。これらの項目は、すべて出現率が低く、発達障害児には観察されても健常児には出現しにくい項目の固まりを示しているものと思われる。
3)第3成分. 前庭刺激要求反応:主要な項目は、「空中に抱きかかえられたり、ほおられることが非常に好きで、繰り返し要求する」、「ブランコなど揺れる遊具で大きく揺すのを好み、繰り返し何回も行う」、「逆さにぶら下がることを好む」等である。これらの項目は、前庭刺激が多く含まれる遊びへの高い欲求を示すものであると考えられる。
4)第4成分. 重力不安と触覚防衛:主要な項目は、「いつも体を硬くしていて、頭、首、肩等の動きが硬い」、「ズボンのすそ・上着の袖口をおりあげることを嫌がる」、「高い所に登ったりすることを怖がる」等である。一部、解釈困難の項目が含まれているが、概ね感覚防衛に関連する行動とそれに伴う運動のぎこちなさを示すものであると考えられる。
考察:
本質問紙の作成にあたり、感覚調整障害の中核的症状である感覚刺激に対する低反応性、過反応性を意図して多くの項目が作成されたが、分析の結果、これらの視点は、第3,4成分として示された。また本質問紙には、臨床場面にて発達障害児によく観察される行動項目が多く含まれているが、これらの行動項目は、健常児には出現しにくい特異的な行動群として第2成分において示された。今後、発達障害児群による内部構造の分析を行い、本結果との差について検討を加える必要がある。